今ごろウーエン話

 琢ちゃんが出た『ウーエン・イ・ウースト』は、ストレートプレイと
いうより、エンターテイメントなパフォーマンスショータイムみたいな
一風変わった催し物で、琢ちゃんは主役をやったわけだけど、その
正直な感想をラジオで聴いた。
 まず、「やって良かったという気持ちに溢れております」とは言ったけど。
いつもやっているお芝居とは大きく違う。他の出演者もダンスだったり
歌だったりを専門とする人たちで、役者ではない。ということで、
やっていてお芝居として勉強になるということは普通の舞台に出るよりも
少なかった。先輩役者さんがいて、ちゃんとした日本の演出家さんがいて
演出してくれたら、やりながら周りから盗んで上手になっていったりという目
があるけれど、いかんせんまわりは役者じゃない。
 演出家はデンマーク人でお芝居を見てもらえなかった。彼は日本語が
わからないし、舞台の雰囲気を「こんな感じにして」というぐらいで、
なにをやっても「ベリーグッド!グー!グー!ナイス、ナイス」としか
言わない。ノーを決して言わない男だった。彼は「5分休憩取ります」と
通訳の人が言ってんのに平気で飯を食いに行って帰ってこない。
がっかりするような稽古の連続だった。
 できれば別のお芝居に出たかったなーという気持ちがありますね。


鈴井さんが、映画監督でも演出してくれない人がいるよ。という話を
始めた。ただ「もうちょっと下を向け」というような指示を出す。
そこで役者がどんな気持ちの入れ方をしたらいいのかとか、どうでもよくて、
「気持ちとか映らないからいいんだ、それで悲しそうに見えるから
それでいいんだ」という、演出とは言わないような方法で撮る人がいる。


琢ちゃんはそれを聞いて「それ考えたらデンマーク人でよかったなー
『ナイス、ナイス』って言ってくれるもん」と納得していたけど。


 ウーエンの現場では、芝居経験者の顕ちゃんと琢ちゃんが共演者の
みんなを引っ張っていかなきゃならなくて、大変だったんだろうな。
いつもナックス5人でやってるから、外部のお芝居に参加させてもらう
時は、他の人から学びたい!って気持ちがすごくあるんだと思う。
琢ちゃんはウーエンではそれが満たされなかったんだなぁ。