吉良の仁吉がんばれ

 洋ちゃんが昨年、初めて全国ドラマに出て、東京の共演者の皆さんと
打ち解けるために一生懸命北海道のお土産を持って上京していたのを
思い出す。今は顕ちゃんがそれをやってる。あの、なかなか人となじめない
顕ちゃんが、がんばってなじもうとしてる。


洋「先日東京でご飯を食べていたらちょうどお隣に『次郎長 背負い富士』で
  安田さんが共演してらっしゃる田中美里先生とお会いしました。前に
  一度だけお会いしたことが会ったので話しかけて『田中さんが共演している
  安田顕、私の劇団員なんです』と言うと『そうなんですかー』と。あれはね、
  決してあなたに対して気持ち悪いとか辛気臭いとかそういう印象を持ってない」


顕「当たり前だ!俺はそういったものは全て封印してNHKさんに足を運ばせて
  いただいてる」


洋「普通だったら『(嫌そうに)えーっそうなんですかぁ〜なんです、あの人』
  っていう反応するんだけどね。そうじゃなくあなたに対して好印象持ってる
  みたいだったから”バカじゃないか”と思いました。」


顕「だとしたらその人の人格を疑うよ。ふざけんなよ!次郎長親分のおかみさんに
  対してひどいことを言うね、おまえは。」


洋「『北海道のお土産をいただいて、とてもおいしくて』って言ってた」


顕「お土産効果ですね。決して賄賂だとは思わないで下さい。私は仲良くなりたい
  という一心ですから。
  北海道限定で発売されているお菓子ってけっこうあるんです。」


洋「わかります。救命病棟で私、毎回持って行きました。待ち時間が多いですから
  その間、話がはずむんです。」


顕「なかなかない味なんですよね。芋のお菓子を持って行きましたらこれが
  評判が良くて、田中美里さんがくいつきました(笑)」


洋「あれは絶対評判がいい。
  田中さんからすればあなたはお尻の毛みたいなものですよ」


顕「否定はしないよ。良かったね〜、リリー・フランキーさん、ほんとにな。
  いいんだ俺かまわない。出してくれればそれでいい。
  お尻の毛のこのワタクシですよ。向こうは蝶よ花よですよ。その花に
  『おはようございます』ぐらいしか声をかけれませんよ。そしたら
  初めて話しかけられた言葉っていうのが『あの北海道のお菓子、
  おいしいですね、なかなかないんですか?私、お金をお払いしますので、
  ぜひ買ってきてもらいたい』『何をおっしゃいますか!小遣い制のこの
  ワタクシが自腹で担いで私が買ってきます』」


洋「あなたがその依頼の電話をしているのを私、見ました(東京でちょうど
  顕ちゃんと洋ちゃんは隣のスタジオで撮影していてばったり会ったらしい)。
  必死になって事務所に『いくらでもいい、じゃがポックルとにかく
  急いで送って!俺帰ってからじゃ間に合わないから!とにかく送って!
  東京に送って!田中美里さんがとにかく気に入ってるの、いいから送って
  いや、俺が帰ってからじゃ間に合わない!』
  必死になってみなさんと馴染もうとしているあなたを見ました。」


顕「さすがオフィスキュー、その日に『送りましたから。なんでも言って下さい』
  ってスタッフからメールが来ました。その二日後、じゃがポックルがドンと
  届きました。雨の日ですよ。自分がずぶ濡れになってもじゃがポックル
  絶対に守るっていう勢いで、自分の上着じゃがポックルにかけてスタジオに
  持って行きました。
  楽屋で個室にノックして渡すと『どうもありがとう!いいんですか』と
  言われて『話しかけていただけて嬉しかったんですよ。嬉しい気持ちを
  表してるだけですから』と。
  中村雅俊さんが『北海道なんだー、あーそうなんだー。北海道のね、
  うすーく芋をスライスしてチョコをかけてコーティングしたお菓子
  好きなんだよね。あれ北海道でしか手に入らないんだよねーおいしいん
  だよねー』と田中美里さんに言うわけですよ。」


洋「会話の入り口ですからね。楽しい現場なんだなというのはうかがえました。」


顕「どんどんエスカレートしませんかね」


洋「北海道ってカニおいしいんだよなーとかね。救命病棟では最後にはケチ
  呼ばわりされました。」


顕「新巻鮭まではいきたいな。新巻鮭以降はごめんなさい、ですね(笑)。」


 顕ちゃん、かわいいなぁ〜。現場に馴染むの、大切大切。仕事がうまくいくか
どうかってそれにかかってるもの。会話の入り口に入れたら、あとは、
いつものようにだまーっていないで、がんばっておしゃべりに加わって。
無理したって洋ちゃんみたいにはならないけど、初めはしゃべって、
そんなにとっつきにくい人ではないんだってことを皆さんに知ってもらおう!
 ”お猿のお尻は濡らしても、地蔵のお尻は濡らすなよ♪”っていう昔話
思い出した。お猿さん達がお地蔵さんをかついで川の向こう岸まで運ぶ話。
顕ちゃんが、ずぶ濡れになりながら不器用にじゃがポックルを運んでる様子が
目に浮かぶよう。
 それにしても、あの役って、日焼けして黒い顔になる必要あんの?
夏野菜の時の「スタイリストの本末転倒な心意気」みたいなもんじゃ
ないんだろうね(笑)?
 私は、顕ちゃんと琢ちゃんは、自信を持って全国におススメできる役者だと
思っているので、”がんばってー”とは思うけど、心配はしてないよ。