落ち込んだときは

 洋ちゃんが落ち込んだときはどうするかというお話。


 落ち込んでどうしようもない時は、下手に立ち直ろうとしちゃダメ。
もうどっぷり浸かるわけ。「あーもうすごいかわいそう、自分。」
どこまでもどこまでもね、浸ってください。かなしみに暮れてください。
そして自分を悲劇のヒロインにしてください。そうするとですね、
どういう現象が起きるかというとですね、どんだけ落ち込んでも
落ち込むわけですよ、まだまだ落ち込むんだっていう時に、ほんの
ちょっと一瞬、楽しい瞬間きますね。一瞬「ヤバイ、笑ってしまった」
っていう時が来るわけです。そうすると、いやいや、まだまだ
落ち込もうとするわけです。自分で無理くり落ち込もうとしている自分に
だんだんさめてきます。「何をそんなに一生懸命落ち込もうとしてるんだ」と。
友達から面白いこと言われて笑おうとした時に「いや、俺こんなことで
笑っちゃいけない。俺まだまだ落ち込まなきゃいけないのに」とかって
やってると、少しずつ落ち込んでる自分にちょっとさめてきますね。
「俺、必死じゃない、落ち込もうとして」
そうすることによって落ち込んでる自分を幽体離脱して天井から
眺めるような感覚になりますね。そうすると落ち込んでる自分というものが
滑稽に見えてくる。泣いている自分、ベッドの横とかでビービービービー
泣いてる自分とかを一瞬ぽっと、こう天井の上から眺めると、何をしてるんだ
っていう気になってきますね。もうそろそろ落ち込まなくてもいいのかなって
いう時が来る。僕はそうですね。
 僕は大学に2浪してどっこも受かんなかった時、俺ずっとベッドの右すみっこ、
脚の右すみっこに一日中ずっと膝かかえて泣いてましたからね。
母さんが涙ながらに「もう洋お願いだから元気出してちょうだい」
ハタチの俺に呼びかけてましたからね。それでも僕はもうずっと膝かかえてた。
俺の友達が、電話できないんだね、俺があまりにも落ち込んでるから、
俺と一緒に浪人してた友達に「大泉ってどれぐらい落ち込んでんのよ」っていう
電話を入れて、探ってたぐらい。
 風邪引いてボロボロなの。鼻水、咳、ボロボロで外ザーザー雨降ってる時に
Tシャツ一丁で「ちょっと俺、外いってくるわ」ケセラセラって言いながら
町内会歩いてたからね。
「はははは・・・こうして風邪をこじらせて死んでいくんだ―――」
そんな時期が僕にもございましたですよ。そういう時にはどっぷりと
落ち込んだ方がいい。僕なんかそう思いますけどもね。下手にテンションを
上げずに。それはそれでいい方法じゃないかなというふうに思いますね。


 洋ちゃんの語りを聞いていると、「僕」と「俺」が混ざり合ってるんだけど、
公にむけて話すときは、「私は」「僕は」と言い、カジュアルに、友達同士
とかで話す時、自分の心の中で思う時は「俺」なんだなあということが
わかる。一緒に浪人してた友達って、幼馴染のひでおくん?